Thursday, 23 June 2016

2016年6月20日、レ・スリズィエの庭。夏至。



夏至の1日前。
素晴らしい五月晴れ。標高1150mの蓼科の森に強烈な日差しが照りつける。


Clematis 'Arabella' 



Clematis 'Arabella' 
前日は曇りの予報で、6月最後の庭仕事のチャンスと当てにしていたのに、午後から降雨。
幸いなことに梅雨の前半の雨らしく断続的な弱い雨でした。週末ガーデナーとしては手を休める訳にもいかず、雨脚が強まった時にはゴアテックスを着込んで庭仕事を決行しました。その古い山用ジャケットは雨漏りするんですけど、例えずぶ濡れになってもさすがに自分ちの庭で遭難はしないでしょうから。


このコーナーは、駐車場から店のエントランスまでのルート。店に来る人は必ず通る動線沿い。
The Gate of Rosa 'Shinsetsu' (June 20, 2016)

常にお客さんの目に晒される重要な場所なのですが、開墾(と言うかむしろ造成)が追いついていないので植栽に手をつけられずにいた所です。
今回はここを「とりあえず」で良いので何とかするつもりで頑張りました。

作業前、これは5月の写真。五月(サツキ)が咲いています。私が特に好きではないツツジ類の中でも嫌いな部類の花木、サツキ。前のオーナーさんの植えたものです。最も嫌いな朱色のツツジ類はとっくの昔に全部伐採済み。ここに残っているのはマゼンタなのでかろうじて許容。(ああ、軽トラの後ろにお隣のツツジのオレンジ色が、、、)
The Gate of Rosa 'Shinsetsu' (May 23, 2016) 
嫌いな花木でもわざと残しておいた訳は、これを抜いてしまうと後ろの雑草やポット類が玄関から丸見えになるからで、まあ、これがあっても丸見えですけど、心理的なワンクッションになってはいるはず。そういう、人間の目はカメラと違うという事に甘えさせてもらいました。

ここに限らずうちの庭は、あらゆる所が未完成で、あからさまに工事中です。だって資本がないのに一人の週末ガーデナーには手に余る広さの庭を作ろうというのですから。(しかも発想だけは豊かでね、この週末ガーデナーは。何だかエライ複雑な庭を構想しちゃって後が大変。)

そうですね、

去年いらっしゃったお客様は、
「わぁ、こんなに百合が咲いてる、素敵!」とか「名前は知らないけど、この花(アガパンサス)は奇麗ですね〜」とか「この青い花(ロベリア)は何て言う花ですか?これは良いですね。どこかに売ってますか?」とおっしゃって下さったり、ゴールデンウィークにチューリップがずらっと咲いていたので驚いたのか、喜んで写真を撮っていったり(全てポット植えです)という方が結構な確率でいらっしゃいましたので、まあまあ目を逸らす作戦は成功したのではないかと思っていますけど。(希望的観測)

それで、afterの写真。
2016年夏至の前日午前10時。
The Gate of Rosa 'Shinsetsu' (June 20, 2016)

エラツム系の青いデルフィニウムがいきなり出現。品種は‘ロイヤル・アスピレーションズ’
Delphinium 'Royal Aspirations' and 'Actia'
結構立派な株なんですよこれ。花茎の高さが約1m。花は濃いブルーでびしっとタイト。茎はまっすぐで丈夫。花屋でこれの切り花を買ったらかなり良い値段だと思います。ポニーハウスの畑に私の種蒔きデルフィニウムナーサリーがあるんですけど、そこから小さめの株を掘ってきました。大きい株は一番花が終わってから花茎を切った状態でないととても掘り出せそうになかったので。(ああ、写真取れば良かった。デルフィニウムの林立する青い畑 in 蓼科。ポニーママがFacebookにのせてくれてましたが)支柱立てる余裕がなかったので、来週私が北海道から帰って来た時には梅雨の雨の中バタバタ倒れているんじゃないでしょうかね。


そのスターを補助すべく周囲にコール・ド・バレエの皆さんを配置。

ベラドンナ系デルフィニウム水色と白。
オルラヤ・グランディフローラ。
薄い青紫のサルビア・プラテンシス ‘スカイダンス’ (一番花は終わったので切り戻して株分け後移植。また咲くはず。)
足元にはグラウンドカバーとして、パトリオット・ファミリーのホスタを大量投入。
パトリオット1株。ロイヤリスト3株。ミニットマン2株。ファイヤーアンドアイス2株。ファイヤーワークス1株。
パトリオット以外は買ったばかりの小苗なので、ここはナーサリーも兼ねています。
ここのヒューケラはパレスパープルだけにしましょう。今は大小2株。もう少し欲しいですね。
そして花の終わったフロックス・ホワイトパフュームの苗4株。やはりナーサリー代わりにここに。葉っぱの濃い緑も奇麗だし。
緑葉のフウチソウ苗。
プリムラ・ヴルガリス。来春のお楽しみ。
イワシャジン。今秋のお楽しみ。
エゾマツムシソウ(Scabiosa japonica Miq. var. acutiloba)とタカネマツムシソウ(Scabiosa japonica Miq. var. alpina)。どこがどう違うのか身近な所に置いて観察しようと思いまして。二つとも放置気味だったポット苗なのに花を咲かせています。強靭さは保証付き。
それから、カカリアのブルーと言うのをホームセンターで買ったのでどんなものかとここに植えてみました。


後ろのフェンスには昨年7月に移植したバラ '新雪'が、燦然と輝いています。これはまるでベツレヘムの星の様じゃありませんか。






'新雪'は、ほとんど香らないという重大な欠点を除けば、最高のツルバラです。
とにかく強い。圧倒的に強い。病気にも寒さにも日陰にも強い。

仮植えした畑でたいして肥料もやらずもちろん消毒もせず冬囲いもせず鹿にもかじられ。なのに気がつくと大きな白い花が咲いている。

よりによって夏に移植され、移植の時にごっそり枝を落とされても、春先のシュートを軒並みカメムシにやられても、持ち前の樹勢の強さで復活してくる。そして次々に上がる蕾。


剣弁高芯の大きな花は、遠くからでも「あ、バラだ!」と分かる所も良いです。クラシカルな花形。雨にも強いしね。



恐れ入りました。
さすが白いツルバラの傑作との評判通り。
ミスター・ローズ、鈴木省三氏のバラです。
Rosa 'Shinsetsu'
2010年に東京で大苗を購入してから鉢で2年、畑で3年。やっとこの場所が安住の地です。ずいぶんお待たせしたものです。これからは肥料も堆肥も水もせっせと与えるので伸びたいだけ伸びて下さい。



この新雪のゲートの外側が駐車場です。
ここは2週間前に植え込みが終わった所。
Full color east shade border garden
命名、フルカラー・イースト・シェイド・ボーダー。
意図的な密植です。シックさとは程遠いです。
花が咲いていないからつまらないなどとお客さんに言わせまいと、とにかく鮮やかさを追求しました。
フルカラーというのに青がありませんね。葉っぱのブルーは青じゃないですから。青と紫は花の色で出すしかありません。一応端っこに濃紺のロベリアがあります。今は咲いてないですけど、反対端にはリンドウ、真ん中には忘れな草があってブルーを担当してます。
実はホスタもヒューケラもここで株を大きくして株分けしようと狙っています。日の出から正午まで燦々と日の当たる楓の木の下という最高の場所でしょう?


植えたての花壇ばかりだとパッとしませんので、次は植えて3年目のシェイドガーデンを紹介します。
ここは北東のゲート。右に見える道路はうちの敷地の北端に接している国道299、通称メルヘン街道。
奥(西)から手前(東)に向かって山を登ってくる坂道です。
The gate of Rosa 'Seagull'
桜の樹の南に植えたバラ、シーガルが上手くここまで伸びてきてくれれば「シーガルの門」になるはずです。しかしここは鬱蒼とした桜の樹の木陰。耐陰性最強のツルバラ、シーガルと言えど、果たして実現するかどうか。桜もバラも同じバラ科同士で根の競合も激しいでしょうし。

イヤイヤ、シーガルならやってくれると思います。期待してます。樹齢100年を超えるシーガルもあるそうですから、この桜より長生きするかもしれません。桜から十分離して植えたつもりです。両方とも長生きして欲しいのでどちらにも肥料はケチらず与えます。

ゲートの北側のホスタ 'フランシス・ウィリアムズ'。
隣合うグラスは黄金葉風知草。木漏れ日に輝く様は黄金の名に相応しい。
'Hosta 'Frances Williams' and Hakonechloa macra var. aureola
手前、影になったフウチソウをふた周り小さくしたような葉は、野州花石昌。姿がフウチソウとかぶるので移動予定。

これがフウチソウと違うのは、小さな星の様な白い花穂をいくつも立ち上げてくること。雪の結晶のような繊細で美しい花。もうすぐ咲くので楽しみ。
隣の赤いヒューケ(レ)ラは周りの色とのコンビネーションは良いんですが、いかんせん元気がない。もっと茂ってくれないとバランスが悪い。これは確かヒューケレラ 'カッパー・カスケイド'。

反対側から。
Heuchera 'Palace Purpule', Veronica‘Crater Lake Blue’, 'Hosta 'Frances Williams', etc.
左のダークな葉、ヒューケラ 'パレス・パープル'とフランシス・ウィリアムズの間に挟まっている細かい葉っぱは、花の終わったヴェロニカ・オーストリアカ 'クレイターレイク・ブルー'。

さっさと切り戻さないとボサボサで見苦しいですね。切り戻しても返り咲きしないのがガッカリでついつい後回しに。しかしこの花、こんな日陰で予想外に良く咲きました。細かく株分けしても確実に咲くので、その気になれば、宿根草の隙間という隙間に突っ込んで青い花をそこここに散らばって咲かせることも可能(数年後には相当込み合って、株分け植え替えに手間を取られるでしょうが)。超日向からかなりの日陰までOK。乾燥にも弱くはない。その強烈な青色は花期の短さを補って植えるだけの価値有り。応用範囲の広い素材だと思います。
'Hosta 'Frances Williams', Pulmonaria 'Lewis Palmer', Polygonatum odoratum var. variegatum, etc.
フランシス・ウィリアムズの隣には斑入りアマドコロ(もう少し増えて欲しい。来年は増殖モードになるか?)。両者の間の白い点々付きの濃い緑の葉はプルモナリア(多分)ルイス・パルマー。

それにしても、フランシス・ウィリアムズは成長が遅い。そう評判は聞いていましたが。この株は鉢で3年地植え2年。もう少し育ってくれてもいいのに。特に隣のホスタ 'パトリオット'と較べると。
Hosta 'Patriot'
パトリオットもフランシス・ウィリアムズと同じ経歴なんですけど、何ですかこの違い。足元の黄金乙女ギボウシが飲み込まれそうですね。せっかく咲いているティアレラなんかもう完全に飲み込まれています。即急に救出しないと。

こちらが去年、2015年6月の姿
June 14, 2015

2016年6月20日に戻って
Hostas 'Patriot', 'Halcyon', 'Bunchoko', and 'Summer Breeze'
パトリオットの下手のブルーホスタは'ハルション'。隣の小さな緑葉白縁は'文鳥香'、その奥の黄班が'サマー・ブリーズ'
エゴポジウムはそろそろ大規模にリストラしないとやはりヒューケラを枯らしてしまうでしょう。

このノースイースト・シェイド・ボーダーではヒューケラの生育が軒並み悪いです。どの品種も。
これはもしやヒューケラにとって日照が足りなさすぎるのでは?そしてホスタや、もちろんエゴポジウムに押されているからでしょうね。プルモナリアにさえ負けてるかもしれません。弱い。

この場所もフルカラー・ガーデンだったんですけど、ホスタがここまでデカくなると、無理してヒューケラで赤や黄色を入れなくても見応えは十分じゃないでしょうか。ホスタの迫力に対抗するにはそもそもヒューケラは小さすぎる。

ヒューケラは移動しますか。そうすると、主にグリーンの濃淡で表現される、もう少し目に優しいシックな庭になるでしょう。込み合って来たので既に別の場所に移動したヒューケラも結構あります。救い出したヒューケラは日向で養生すればまた別の場所で活用出来ることだし。

どうやらヒューケラは特別に日陰が好きと言う訳ではないんですね。ダメなのは高温多湿で、それ故に低地では半日陰、特に西日を避けた半日陰に植えろと言われているのでしょう。うちでは鉢増ししたポット苗を畑のナーサリーにほったらかしている事も多いですけど、水さえ切らさなければフサフサ茂ってますから。葉焼もしませんね。しかしベストな場所はやはり午前中のみ日の当たる半日陰、適湿の肥沃な土地でしょう。

長くなったので後は端折ります。

ノースイースト・ボーダーの下端。ホスタ 'ダイアナ・リメンバード'と'ジューン'
Hostas 'Diana Remembered' and 'June'


伽羅奢の門
あのー、仮看板のためのポールですけど、ここだと伽羅奢が日陰になるんですけど。
The gate of Rosa 'Gracia'
ノースウェスト・ボーダー。昨年秋に定植。ここもフルカラー・シェイド・ガーデンです。国道299沿いなので、人目を引く事を考えて、いかに鮮やかに、派手にできるかやってみました。
うわー、見本市みたい?リーフマニアがこれでもかと無節操に詰め込んだような。
Full color northwest shade border garden 
都会のまっただ中ならレストランの庭をナチュラル・ガーデンでまとめるのも有りでしょう、雑木林風とか、山野草の庭とか。羊歯の庭とか。そんなスタイリッシュでハイセンスな都会の庭。素敵。
しかしここでそれをやったらただの放置ガーデン(近所に気を使って時々草刈りする程度の)にしか見てもらえない懸念もあり。別荘地のお客さんなんか自分の別荘の庭がまさにそうですから。ほとんど手をかけないのに勝手に美しいシーンができるんですよ。良い事、だと思います。

その代わり自力で「庭」を作って園芸植物を植えようとしたら大変な重労働が待っています。自然に任せるか、自然に逆らうか。中途半端は淘汰されてどちらかになるでしょう。
Full color northwest shade border garden 

私自身の趣味もまだそこまで枯れてないので、斑無しの宿根草と羊歯と苔と樹木で構成されたしっとりした山の庭、折々に山野草が静かに咲いている温泉旅館の庭園のような庭、では作っても欲求不満が溜まって耐えられないでしょうね。そういう庭の旅館に滞在するのは良いんですけど。
そもそもうちの敷地には水がないから挑戦しようがないじゃないですか、残念な事に。
Full color northwest shade border garden 
周り中緑で「自然」があふれている、こんな森の中でせっかく庭を造るなら,
いかにも「庭」らしい庭を作りたい。
不調和なのは嫌ですが、クド過ぎない程度に派手にやっちゃいましょう。飽きたら方向転換すれば良いのだし。
Full color northwest shade border garden 
そんな思いの表出された、フルカラー・シェイド・ボーダーガーデン。


最後に、299沿いの一番低い端、北西の角。
ペレニアル・ブラッシュの門。
The gate of Rosa 'Perennial Blush'
やっと咲きました。

しかし、私はこれから東京で、そのまま木曜日には北海道に飛びます。
主に庭園を見に行きます。ベルトランも私も凄く楽しみにしています。もう3年ぶりのレジャーですよ。
ここ数日信州もいよいよ雨ばかり降るようになって本格的に梅雨ですね。この写真のような美しい6月はもう終わりです。

戻って来た時には果たしてどんな惨状が、、、。