Thursday 14 July 2016

Iris ensata:早春から続いたアイリス駅伝最終ランナーは豪華なイリス・エンサータ

Iris ensata var. ensata
花菖蒲の事です。
英語ではJapanese irisと呼ばれています。
Iris ensata var. ensata 'Nagai Sanshisuimei'
'長井山紫水明'

私はアイリスが好きなので、気がつくとあらゆる種(しゅ)に手を出して庭に植えています。
春一番に咲くイリス・レティキュラータ(Iris reticulata)に始まって、
球根ミニアイリスの競演をへて、
ダッチアイリス(Iris. × hollandica)、
アヤメ(Iris sanguinea)、
ヒオウギアヤメ(Iris setosa)、
カキツバタ(Iris laevigata)、
ジャーマンアイリス(Iris x germanica)、
シベリアンアイリス(Iris sibirica)、
ニオイアヤメ(Iris pallida)。

目立たないながらも4ヶ月間延々と続くうちの庭のアイリス花リレーは、ハナショウブの開花をもって終了します。

Iris reticulata 'Hermony'
イリス・レティキュラータ 'ハーモニー'

江戸時代以来、日本で300年も改良され続けて来た花菖蒲。シベリアにも自生していますが、日本での長い栽培と品種改良の歴史からしてJapanese Iris の名で相応しいと思います。

蓼科高原(具体的にはその何処の部分なんでしょう?)や霧ヶ峰高原、入笠山に野生の花菖蒲(ノハナショウブ)の自生地があるくらいですから、うちの庭や畑は花菖蒲にとって住みやすい気候のはずなんです。
花菖蒲の色もまた、暖地より寒冷地の方が鮮やかに美しく出るそうですよ。(そういう花は他にも多いですけどね)

私が花菖蒲に興味を持ったのは、薔薇の一番花と百合(オリエンタルハイブリッド)の間に挟まれた「端境期」に庭が寂しくなるのをなんとかしたいと思ったから、だったかもしれません。

私は田舎育ちなので、家の庭には「当然ギボウシと花菖蒲が植わっていました。あまりにも普通の植物で、珍しくもない花。

その当時から花菖蒲に対して思っていた事は、
「花の形は好み。特にフリルのない一重の凛々しい形の花が好き」
「紫ではなくせめて青紫の花があったらいいのに」
「悪くはないけど、買ってまで庭に植えたい花ではない」

自分はどうでも、お客さんは喜ぶ(人もいる)でしょうから、端境期対策として花菖蒲でも植えようかと思って品種を調べてみたら、意外に私の好みの花がある事に気がつきました。それで取り寄せて咲かせてみたら思った以上に華のある花で、「これは使える」と。

この庭では、紫陽花の花芽が凍害を受けて、株は生きているのに花が咲かないという悲しい事になります。
花の咲かない紫陽花ほど無意味な物はないとか?誰かそうおっしゃいましたっけ。

青い紫陽花。
嘘偽りなく青と呼べる花。
本当はせいぜい紫色でしかない花を「ブルー」と呼ぶ誤摩化しが全く必要のない花。
薔薇なんかに至っては、少し紫がかったピンクの薔薇でさえ堂々と「ブルー」といいますからね。あんな大ウソが許されるのはホント薔薇だけですよ。

そんな中、'true blue' の青を持つ、数少ない貴重な花。
それが寒すぎて咲かないなんて、私にとっては大ショックだったんです。
そんなに弱いのか紫陽花。冬囲いするのか紫陽花に!

ヤマアジサイなら問題なく咲きます。
Hydrangea serrata 'Aihime'
'藍姫'

けれど、テマリアジサイの、あのtrue blueの圧倒的な青い塊を庭に咲かせる事ができないとは、何と残念な事でしょう。
ほんの300mも下れば、茅野の町中で濃紺の紫陽花がドカドカと咲いていると言うのにね。

この紫陽花は咲くんですよ。しかも8月に。
品種名不明
ヤマアジサイの血が濃いのでしょう

この時期、他に使える大型の花には、アジアティック・ハイブリッドの百合があります。


 Lily(Asiatic Hybrid)

それに遅れる事2〜3週間で、アガパンサスが咲いてきます。ボリュームでは百合に劣りますが、独特の花形で一種のオーナメンタル・プランツみたいなものですから、咲くと存在感があります。
Agapanthus 'Mori no izumi'
'森の泉'

アナベルもだんだん白くなってきました。しかしまだ株も小さく見応えはありません。
Hydrangea arborescens 'Annabelle'

放置ナーサリーである畑に行ってみたら、花菖蒲が咲いていました。
Iris ensata 'Shiokaze'
潮風
Iris ensata 'Shiguresaigyou'
時雨西行

去年咲かなかったこの二つの品種が咲きました。
Iris ensata 'Shiguresaigyou'
時雨西行
Iris ensata 'Shiokaze'
潮風

特に '潮風' は今まで見たどんな花菖蒲より青い花で嬉しかったですね。
イリス類に関しては、無理矢理加工して青くした苗屋のカタログに何度も騙された身としては感無量です。
加茂花菖蒲園は嘘をついてなかった。


花菖蒲データベース

潮風

潮風はかなり青っぽい青紫ですね。
紫の色味は確かに残るけどギリギリ青と呼んでも怒られないくらいには青いでしょう?

私も写真の加工には気を使っていますよ。自分の願望の色でなく実物の色を再現するように凄く気を使ってます。

ベルトランなんか、
とうとうこんなアプリまで導入して色合わせを

'時雨西行' も「水色」と言うには微妙ですが間違いなく青紫なので、これなら「ブルー」と呼んでも許せるレベル。

この2つが咲いたのはいいんですけど、実は去年咲いた4つの品種が咲きませんでした。

まず、春に芽吹いて来たばかりの所を、ごっそり鹿に喰われたんです。
イリス類は毒があるんですけどね。去年生まれたばかりの若鹿なんか、グラスっぽい形の物はとりあえず齧ってみる方針らしくて、茂っていれば何であろうとも齧って行きますから。

葉っぱが半分になりましたけど、また生えてくると思っていたらどんどん枯れて来て慌てました。
春に乾燥が続いて水切れを起こしたのかもしれないと思います。花菖蒲を植えた場所の東の半分の株だけ枯れました。

この'潮風''時雨西行'は枯れなかったので順調に開花まで漕ぎ着けましたが、東半分の株は一旦葉が全部茶色くなって、もうダメかと思ったら新芽が出て来たという状態で、当然今年は花なんか見込めません。

去年は花数は少ないながらもあんなに奇麗だったのに。
今年はもっと大株になってたくさん花が咲くと楽しみだったのに。
株ごと消滅しないだけまだ良かったです。
July 2, 2015
July 2, 2015
耐寒性は問題なく強いし、一旦は芽吹いて来たのですから、やはり乾燥のせいだと思います。病気や害虫という感じでもなかっですし。

畑の土では湿原と違って乾きやすいんでしょうね。いや、湿原はそもそも常に水が流入するから湿原なのであって、基本的に潅水をもっと頻繁にするべきでした。
乾燥対策に大量に堆肥を入れて、酸性が好きなのでピートモスなんかも入れて、更にたっぷりマルチングでもしておけば良かったですね。
そして冬でも水をやる。特に春先の乾燥する時期には、夜に寒さで凍ってもいいから水をやっておけば良かったか。ドロドロのぐちゃぐちゃになるでしょうけど、どうせ自生地の春の状況なんかそんな感じですから。(来年はちゃんと対策しましょうね)


Iris ensata 'Aosuishou'
'青水晶'
端正な形、coolな色、とても好きでした


Iris ensatas 'Suwaharajo'(upper) and 'Nagai seiryu'(lower)
'諏訪原城''長井清流'
Iris ensata 'Suwagoryo'
'諏訪御寮'
これはサービス品でした(ありがとうございます)
自分では選ばない品種ですが美しいですね。紫の衣の貴婦人。
(諏訪御寮人は武田信玄の側室で、文句無しに美しい人だったそうです)

去年買った苗は全部ポット植えにしました。そうしたらやはり半分くらいは蕾が上がらず、どうやら今年は咲かなさそうです。こちらも乾燥のせいか、肥培が足りなかったせいか。
何だか全然駄目ですね私の栽培は。

それでも今年咲いた花は、単品で見て見蕩れる程には十分魅力的でした。苦労も報われます。
え?何もしなかったくせに苦労とはこれ如何に?
あ、草取りはしました。
肥料も少しやりました。水もやっています。
美しいのは主に品種の力ですね。
元々の遺伝的素質が良い事に勝る物はありません。優秀な品種を選ぶ事。野菜でも花でもそれが一番重要。


梅雨の晴れ間の貴重な朝。店の定休日。
July 11, 2016 午前10時
ベランダで2人で朝食にすることにして、紅茶を飲みながら庭を眺めると、こんなシーンが見えました。
影をバックに白いアイリスが日射しに当たって浮かび上がる。ちょっと、うっとりするくらい素敵なんですけど。

株は全部鉢植えで花は1、2輪しか咲きませんが、それでも来年の風景を想像するのには十分です。

ところで、上の写真妙な妙なトリミングですよね。
フォーカスも合ってないし。

それはこういう訳です。
引きで見るとこんな状態です。
ほんとうに、ほんとうに、もういい加減後ろのチューブをなんとかしないと!

ここに来年までには花菖蒲ベッドを作りましょうね。営業時間前のこの時間で、白い花の咲いている所までは日が当たるので、花菖蒲を植えるならそこより手前にすることにして。
そう、これはお客さんではなく、自分達が見て楽しむための演出です。

青、白、ピンク、と紫と白の2色咲き、もしくは砂の入った微妙な色合いの品種なんかをmixで植えて。
ベランダ(客席)から良く目立つような配置で。

午後の写真


Iris ensata 'Himekagami'
'姫鏡'
この場所は庭のメインステージの舞台中央です。
ここに大抜擢するほど花菖蒲に惚れ込むとは昔は思っても見ませんでした。(いえ品種コレクターにはなりませんよ。素材として使うだけです)

1年の間に、たった2週間くらいしか咲かない花ですけれど、梅雨時の花の少ないこの時期に咲く、しかもこんな華麗な花を咲かせてくれるのですから、特別扱いするのには十分な理由だと思います。
例えば、他にも花があふれている時期に咲くジャーマンアイリスなんかよりも、役者としてずっと重要です。

Iris ensata 'Takarabune'
'宝船'

花菖蒲だけを植えると花のない時期に(当然)虚しいので、花菖蒲園では普通やりませんが他の宿根草との混植にしたいものです。何ならいいでしょうね、花菖蒲の自生する高層湿原の花でしょうか?

「湿原に咲く花」などで花のリストを得ても、一つの湿原の中にも乾湿の条件が違う場所が入り乱れているので、自然の状態で実際に野花菖蒲の隣に何が咲いているのかはわからないのです。
それなら自分の目で見て来るしかないでしょうか?八島湿原ハイキング?ついでに美ヶ原ドライブ?いや、そんな時間は多分ないです。
車山・霧ヶ峰を通るドライブルート、
ビーナスライン(ヴィーナスと読んでほしい)。
この辺りならまだ近いので行きやすいですが、
美ヶ原はもっと奥で家から1時間くらいかかります

一旦行ったら1時間や2時間で終わる訳が無くて、つまり1日仕事。
霧ケ峰高原から見る富士山

それともう一つは、花期を花菖蒲と重ねるのかどうか。
花菖蒲が咲く時期に他の花が咲かないようにすると、古典的な花菖蒲園みたいでしょうか?
花菖蒲の間に違う形の花が混じり合って咲くとコテージガーデンスタイル?上手く合う花って何でしょうね?
というか、今の時期に咲いている花で日向の湿原が得意な物って何?
うーん。

下野や下野草、三ツ葉下野、雪ノ下(あ、可愛いかもしれない)。こういう植物は、蓼科の標高1150mではこのくらいの日向に植えても全然平気です。
白山風露。今の時期に咲く品種の擬宝珠。蛍袋。河原撫子。
ベタだけど日光黄菅はどうかな?
いやあの黄色は合うかなあ?
お客さんは間違いなく喜びますけどね。車山・霧ヶ峰のニッコウキスゲは有名だから。
乳茸刺つまりアスチルベ、は今現在日陰で美しく咲いています。しかし日陰で十分咲く花をうちの庭の貴重な日向に植えるのは場所がもったいない。

Wild Astilbes
庭に生えていた野生のチダケサシまたはその近縁種

は?
小梅蕙草(コバイケイソウ)ですって?
ものすごく好きな花なんですけど、苗が売ってないじゃないですか。

深山猪独活(ミヤマシシウド)だって苗さえあれば買いますけど。
大型で盆栽に向かない山野草・高山植物って全然売ってませんね。
種も入手困難で(というか見た事ない)。


Iris ensata 'Wakazakura'
'若桜'

花菖蒲が終わった後で咲くように夏の花メインにしましょうか。
桔梗。沢桔梗。九蓋草(大きすぎる)。白玉星草。松虫草。吾亦紅。蕎麦菜。釣鐘人参。蝦夷竜胆。御山竜胆。晒菜升麻。鳥兜。野紺菊。
グラスを足したら草原風になりますよね、場所が狭いけど。
屋久島糸芒と姫野刈安ならどうでしょう。

もう咲き終わったものだと、柳蘭がありますね。良さそうです。
苧環も良いですね。
九輪草?そういえばその手があったか。

日本の物じゃないけどサルビア・ウリギノーザは?湿原は大得意でしょう
そして湿原が得意かどうか知らないけど水の好きなシュウメイギク。
背の高い白い奴。秋に咲いたら素敵。

野花菖蒲の群落の写真を見ると、他の花は写ってなくて緑の草原の中に紫の花だけが見えるんですよね。せいぜい薊とハルジオン(手入れが悪いせいで雑草が生えてるようにしか見えないから植えるのは却下です)が一緒に咲いているくらいで。
やはり交代制にしましょう。

春先は福寿草、猩猩袴。続いて二輪草、九輪草。初夏は柳蘭。梅雨時は花菖蒲。夏は吾亦紅、松虫草、蝦夷河原撫子。秋は鳥兜、野紺菊。
サルビア・ウリギノーザも入れておきましょう。夏にほっそりと立ち上がる青い(true blueの)花が好きです。秋になっても咲き続けるし。
タリクトラム・デラヴァイもこの辺りに映えそうな、、、

あれ?
植えるスペースはそんなに広くないんですけど。こんなに入りますか?
プランニング中
ベースの写真は3年前。まだ庭の造成に手をつける以前。


最後に、ベルトランの取った芸術写真を。
真上から見た花菖蒲
なかなか無い