Wednesday, 2 November 2016

Aster microcephalus var. ovatus 'Kiyosumikongiku':清澄紺菊


秋と言えば菊。
私は大輪の菊は好まず小輪ばかり、しかもつい原種を集めてしまいます。

そのうち草原っぽい庭を作って、グラスの間にサルヴィア・アズレアや小菊が咲き乱れるような秋の庭にするのはどうでしょうね。所々にエキノプスやモナルダのボール状の咲きがらが突き出していて、ローズヒップがあちこち鈴なりで、ススキの穂が逆光に光る。
場所はベルトランの作っているアトリエの前なんかが良いのではないかな。西向きの窓から夕日が沈むまでずーっと見える。(夢想)

この八ケ岳西麓の広い斜面は、北アルプスや霧ヶ峰高原などから見ると沈む夕日に真っ向から照らされて長いこと赤く染まって見えているので、私のイメージでは秋のグラスガーデンはここにとても似合うでしょう。

View Yatsugatake mountain range from Kirigamine Heights (Dec.20.2015)
夕日に染まる八ケ岳西麓の広大な裾野。遠くに霞む富士山。
この年は雪が全然降らなくて、これは晩秋どころか12月の写真でしたが、
車山には見事な枯れ野が広がっていました。

最初に買ったのはエゾノコンギクでした。これは正解でした。
背丈も暴れず。乾きにも強く。半日陰に持って行っても余裕で咲きます。野草っぽい場所でも浮かないし、他の栽培品種の間で使っても見劣りしない。
Aster microcephalus var. yezoensis(Oct.8.2016)
蝦夷野紺菊(エゾノコンギク)

しかしこれはもっと濃い色だったはずなんだけど色が薄いなあ。
日照不足か肥料不足?

これはサービス品でやって来たタカネノコンギク。
私の好みからいうと、ちょっと花が付き過ぎですね。花形も健康的過ぎて面白くないし、更には寸詰まりな草姿もイマイチで。少なくともこの場所には似合わないのでどこかに移動するつもりです。時間に余裕があればね。
Aster viscidulus var. alpinus(Oct.8.2016)
高嶺野紺菊(タカネノコンギク)
(箱根菊の高山型変種だそう)
こっちが本家箱根菊です。8月から咲いて、今はとっくに咲き終わっています。
Aster viscidulus(Sep.10.2016)
箱根菊(ハコネギク)
花期が早いのは比較的日向植えだからか、性質なのか(多分性質)。
こっちは好きですよ。疎らに咲く様も、隙間があってビッシリし過ぎない花弁も「野菊」っぽくて。花期が早いのも良い。他の菊がまだ咲いてないですから。
茎はひょろひょろ伸びて自立しなくて、四方八方に倒れた茎が周囲の宿根草の間から再び立ち上がって開花する。その様子がまた「自然」風。花色は個体差があるそうですけどこの個体はほぼ「白菊」でした。

で、
真打ちはこれ。これは私にとって今年一番のキク科の収穫でした。有名な「清澄紺菊」です。
「清澄白山菊」とも呼ばれているけれど、そっちのほうは間違って付けられた名前だそうです。
Aster microcephalus var. ovatus 'Kiyosumikongiku'(Oct.8.2016)
咲き始めの清澄紺菊(キヨスミコンギク)

野紺菊の変種。
野紺菊ならすぐ側に大量に咲いていた野生のものがありますが、花期がもっと早く既に咲き終わっています。
日照条件の違いがそこまで影響してるのか。(あれが本当に野紺菊ならですが、アスター類の同定なんてとても私の手に負えません)

去年9cmポットを植え付けたばかりですが、春・夏と目立たず静かに増殖を続け、花茎が立ち上がって来くるころには結構なサイズになっていました。背はわりと高いです。80cmくらいになりました。

花の形は繊細さがあって可憐。色も後述する様に美しい。花付きは良いです。花付きが良いのは良いけれど、あまりビッシリ付きすぎると人工的な雰囲気がして嫌な事がありますが、これにはそれはない。
花を付ける枝(この場合でもステムと言うんでしょうか?)が長いので花のクラスターが詰まり過ぎていなくて軽い。枝や葉や花がスッと広がって空間を広く使っていて、背後をちょうど良く透かす。
たとえ花壇の最前列に植えたとしても、重たくならないんじゃないかなと思います。

和風洋風いずれもOK。しかも「華やかなのに派手すぎずクドくない、上品、背丈があってボリュームもあるのに軽ろやか、そのくせ風雨に強い、半日陰でもよく咲く」という超重宝なキャラクターです。他の花が少ない秋に咲くという大メリットは言わずもがな。
Aster microcephalus var. ovatus 'Kiyosumikongiku'(Nov.1.2016)
清澄紺菊(キヨスミコンギク)
前夜の雨で倒れ気味なれど
この程度で済むなら雨に弱いうちには入らない
野菊なんてどれもこれも花自体がそれほど個性豊かな訳ではありません。この菊も、薄く紫がかった白い一重の小さな花。(とは言っても紫のグラデーションがかった白い花は綺麗ですよ。咲き進むとツクバネ、と言うかバドミントンのシャトルみたいに花がそっくり返ります)

何と言ってもこの菊の一番の売りは、茎に紫の色素が濃く入っていることに尽きるでしょう。
Aster microcephalus var. ovatus 'Kiyosumikongiku'(Oct.23.2016)
清澄紺菊(キヨスミコンギク)
明るい背景にその広がりのある細い茎がクッキリ黒く浮かび上がる、その様がシャープでクールで野暮ったくない。そう、野菊のくせして地味でも田舎臭くもないんです。とっても垢抜けてる。
「和モダン」というんでしょうか。クローズアップ写真で見るとシックで繊細で、一輪挿しにして茶室に飾ると映えそうな雰囲気。茶室じゃなくて洋風の(ただし高いめの)店に大枝を切ってドカドカ飾ってあっても豪華でよさそう。高級感がある。
所詮たかが野菊なのに。
丈夫で強くて、そのうち増えすぎて抜いて捨てる(笑)はめになるくらいなんでしょうに。

いやいや丈夫なのは何よりですよ。凄く大事。美しさの次に大事。

この菊の、群生させると野草の雰囲気満点で、しかも垢抜けてて、通好みで、都会的植栽にも合う所、使えますでしょう?
(もし迷ってるなら買っときなさいな)私など庭に自生している野生の野紺菊を全面的にむしって全てキヨスミコンギクで置き換えても良いなあ、とか思ってるくらい(手間がかかるのでやりませんけど)。一度植えたらあっという間に増殖して、背の高い目のグラウンドカバーとして大活躍間違い無し。
大丈夫、野紺菊はそんなに質が悪くはありません(ヨモギに較べれば)。引っこ抜くのも楽です。
Aster microcephalus var. ovatus 'Kiyosumikongiku'(Nov.1.2016)
清澄紺菊(キヨスミコンギク)終盤
もういつ霜が降りて強制終了になるかわからない
そんな晩秋の庭を飾る
名残の花
ちなみに11月1日、まだ咲いてます。
でも、残っていた蕾は全部開花しています。
最後の花まで霜に間に合った形ですね。